なんていう妄想はこの噂のホテル街をずんずん進んでいくにつれて、疑問をもちはじめた。

だって、慎吾はわたしと違ってホテルなんて興味なさそうに歩いてる。

いっさい目も触れぬかのように、ただまっすぐ前を見て歩く。

だから、そんな慎吾を見て、変な妄想を一人で膨らませて、慎吾を勝手に責めてる自分が情けなくて、恥ずかしくて。

少し前をあるく慎吾の背中に、ごめんねって呟いた。

でも、勘違いするようなこんな場所、できれば避けてほしかったなってことも、ついでに呟いておいた。

だって…時間が時間だしね。

「ほら、美波」

そう後ろに伸ばしてきてくれた慎吾の手を驚きながらも、嬉しくて思わず手を無視して腕に飛びついてしまった。

「おっと」とかいいながも、嬉しそうな慎吾の表情をみて、もっと幸せな気分になれた。

こんなにも愛しい。

こんなにも傍にいたいと思う人は他にいないよ。

腕を組んだまま5分ほど歩くとホテル街から抜け出すことができた。

慎吾がそんな気はないってわかっても、勧誘のお兄さんやホテルの中に入っていく人たちを見るとなんだか妙に恥ずかしくなってしまってた。

だから抜け出したことに安心っていうのかな?ホッとした。

ホテル街を抜けてすぐくらいの場所に鳥居があって、鳥居の奥には長い石段があった。

慎吾はためらうことなくその石段を上っていく。