これはまだわたしが中学時代のお話。


―――――――…


「美波っ!」

「なに?あっこちゃん」

あっこちゃんは本名があっこなわけじゃなくて、敦子っていうのがほんとの名前。あっこはあだ名。

学校に来て早々、挨拶をする前から何か話題を持ってあっこちゃんがわたしの前にやって来た。

あっこちゃんの話から想像すると、あっこちゃんはさっきまでA組にいたらしく、A組の前を通るわたしの姿を目撃してすぐに来てくれたんだろう。

「美波の幼なじみ、シンタとアキ…なんとかだっけ?」

「シンタじゃないよ、慎吾。それに晃だよ。」

「そうそう、その二人。」

結局二人っていうグループにまとめられてほんとの名前は言ってくれないらしい。

あっこちゃんがまともに慎吾と晃の名前を呼ぶのを聞いたことがない。

って多分…呼んだことないんじゃないかな?

いつも、さっきのシンタとかアキなんとかとか、美波の幼なじみとか、なんか…可哀想。

「二人がどうかしたの?」

通学カバンの中から、教科書や筆箱といった文具を出し机の中にしまいながらあっこちゃんに尋ねた。

「その二人有名だよ!」

いやいやいや…いきなり有名って言われても、なにが有名なのか全くわからない。

あっこちゃんの脈略のなさに驚くしかない。