「こ、こいつらは……!!」
入学式を数週間後に控えた、ある日の昼下がり。
四月から自分が受け持つクラスに関する書類を受け取り、驚愕する教師が一人。
「どういうことですか、校長!」
バンッ。
教師が机を叩く音が、虚しく響く。
「どういうこともなにも……
これが、お前の新しい生徒達だ」
興奮気味の教師を冷ややかに見つめながら、校長は煙草の煙を吐き出す。
「そんな……
俺には荷が重すぎます!」
生徒の履歴書をめくる教師の手が震える。
一枚、また一枚とめくるのに比例して、顔が青ざめていく。
「どうしてそう思うんだ?」
校長が、煙草の先端を灰皿に押しつけながら教師に問う。
「だって……
このクラスは、S級問題児の集まりみたいなものじゃないですか!!」
――――――――S級問題児。
中学時代、学年一の問題児と認められた者だけに与えられる称号。
因みに、全く名誉なことではない。
「しかも!
このクラスの奴らは、S級問題児の中でも名の知れた者ばかり!」
そう。
彼が受け持つことになったクラスのメンバーは、S級中のS級。
中学界だけに留まらず、高校界でも知らない人はいない……
―――いわば、SS級である。
「とにかく!
俺には務まりません。
いくら校長の頼みでも、こればかりはお断りさせていただきます!」
バシッ。
バタンッ。
教師は渡された書類を机に叩きつけ、乱暴にドアを閉めて出て行った。
「……はぁ」
一人部屋に残された校長は、大きくため息を吐く。
そして……
「やはり、アイツしかいないか……」
意味深な言葉を残して、部屋を後にした。
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