黒いスーツの王子様

「あ‥!」


男の人はあたしの着ているトレーナーの袖を捲くり、
アザだらけの腕を曝した。




腕のアザまで‥

知ってるの?



「‥お前。なんでこんなにアザだらけなの?」

「…あ、あたし‥おっちょこちょいだから‥よく転ぶんですよっ!だから色んなところがアザだらけで・・・」


必死にごまかす。


でも‥

男の人は何も言わず、
これが嘘だという事が
わかっているみたい。


リビングはシーンと静まり返り、キッチンの換気扇のゴ――という風の音だけが聞こえる。





「‥別に、お前が言いたくねェんなら‥無理に聞き出すことじゃないかもしんないけど・・・」


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