「ちんちくりん!寝るのは構わねーがココ、付いてるぞ。女の癖にきたねーな!」


三枝弟は自分の口角をトントンしてあたしを見た。


はっとしてあたしも自分の口角を撫でた。


「・・・あっ」


口には何やらザラザラした感触。


そして・・・今まで突っ伏してたデスクの上を見ると、小さい水溜りが出来てた。


そう言えば・・・ケーキ一杯食べてる夢見てたかも。


って・・・よだれじゃん~~~~!!!


あたしは手で口元を隠して組長室を出た。


うぁ・・・恥ずかしい。


早く顔洗わなきゃ。


あたしは小走りで洗面所に向かった。


洗面台の鏡を覗くと、自分でも笑ってしまうぐらい綺麗によだれの後が付いていた。


「最悪・・・」


顔を洗い終えて渋々組長室へ戻った。


がちゃっ


「ぬぉ??」


入った瞬間あたしの目に飛び込んできた落ち着いた紺色の着物。


さっきまで組長室には無かった代物です。


「ど、どうしたの?これ」


襟元にはお父さんの組「後藤組」の紋章が描かれてた。


着物をじっくり見てる三枝が、


「お嬢のお母様が着るはずだった着物ですよ」


にこっと笑顔を浮かべて言った。