kasiraな私

あたしは葬儀の人に紹介されて、マイクを持たされ・・・前へ立った。


・・・緊張で、足が震えるぅ。


組員全員があたしを見てる・・・


こ、怖い。


でも、ちゃんとお父さんに感謝の気持ちを伝えなくちゃ!


「・・・ふぅ。あたしは後藤保、後藤組の組長の一人娘の藍です。皆さんには生前父が大変お世話になりました。


お父さんは組の中では凄く怖くて・・・あたしはそんなお父さんの事が大嫌いです。


でも、組から離れて家で一緒に居たお父さんは大好きでした。


どんな時も笑顔で、優しくて・・・あたしにはお父さんしか居なくて・・・ぅぐっ」


お父さんが居ないと・・・あたしダメだよぉ~。


お別れの手紙なんか読めないっ!


あたしは涙を堪えきれずにぽろぽろ泣いた。


持ってたお父さんの手紙にはあたしの涙で字が滲んじゃって。


手紙の続きを読めずに立ち尽くしてあたしは泣いた。


「こっち、来い」


誰かにがしっと腕を掴まれてざわざわ言う組員の間を腕を引かれて走った。


あたしの手を引く人の後姿を見たけど、目が涙で滲んで誰かはハッキリ分からなかった。


あたしの家の長い廊下を腕を引かれてズンズンッと進んだ。


鼻を啜りながら・・・引かれるまま、その人の後を追った。


気付くと門前に来ていて、そこで引かれていたあたしの腕は離された。


「ったく。泣くなら初めから前に出るな!みっともねぇな」


「・・・・・・・」


あんただったのか!


あたしの腕を引いてこんなとこまで連れてきたのは!!