その日、望巳は珍しくバイク通学をやめて徒歩通学をしていた。



 たまにあるのだ。



 バイクが走らせられない時期というのが・・・。



 特に『給料日前』には。



「おはよう~。望巳くん」



 曇り空の下、雨に備えて傘を振り回しながら家を出ると、聞きなれた声が後ろから聞こえた。



「おはよう、早月さん。」



 顔を向けて返事を返す。



 家を出てから2,3分の距離。



 自分たちが住むところが近いせいか、近所の目が気になったが、早月さんは自分の隣で歩調を合わせて歩き始める。


「バイクどうしたの?歩きなんて珍しいね?」



 ・・・・・そっちこそ・・・・・・・・。



「バイクのガソリン代も馬鹿にならないものでね。この時期は極力バイク通学は避けているんだよ。」



 とりあえず、隠してもしょうがないので正直に話す。



「なるほど。金欠というわけだね?・・・望巳くんらしい。」



 口にしながら、早月さんは、フフフとかわいらしい笑みを浮かべた。



「どういう意味。それ?」



「あ、別に可愛いと思っただけだよ。気に障った?」



 笑いながら、自分の顔を覗き込む早月さん。



 その顔は本当に愛らしく、ソレこそが、彼女の人気の秘訣なんだろうと実感する。



「別に・・・。」



 もちろん、そんなもの自分には通用しないが・・・。