「別に、それだけじゃないんだけど・・・。あ、ここだ。」



 何かマップらしきものを見ながら歩いていた早川さんの足が止まる。



 二人が着いた場所は、映画館ではなく、赤塚駅前。



「ここからだと、映画館は遠いけど。」



「ここで、待ち合わせしているんだよ。」



 誰と?



 疑問に思ったが、ソレはすぐに解消される。



「あ、なのは~久しぶり~。」



 駅から聞きなれない女性が現れたかと思うと、一目散に早川さんに向かって開け足で寄ってくる。



 前の学校の友達か・・・。



 考えなくても、すぐに予想がついた。



 でも、だったら、俺がいるだけ余計邪魔だろう。



「久しぶり、麻美。あれ?一人だけ?」



 ソレに対してどこか不思議そうな声を上げる早川さん。



「ううん。違うよ。歩、こっち~。」



 言われて出てきたのは、一人の男の子。



 短髪に彫りの深い顔。



 自分とは対照的なスポーツマンタイプの少年。



 どちらかといえば、速人に似ている。


「悪い悪い、道が良く分からなくて・・・。あ、なのは、久しぶり。」


 笑顔を振り向きながらこちらに近付く男に対して、どこか無理やりな笑顔を作る早川さん。



 あ・・・・・そういうことか・・・。



 望巳はその瞬間、どうして自分がこの場所についてきたのか、分かったような気がした。



 もちろん、それはただの憶測であったが、早川さんの表情を見る限り、それは間違いないような気がした・・・。