高校での転校は小中学校と違い面倒な転入試験を通さなければ入れないし、場合によっては一人暮らしだって可能だから、親の都合だけとは限らない。



 そのため、彼女にはよほどの事情があるのだろう。



 しかし、望巳はそんなことは対して追及する気にもならなかった。



 確かに彼女は可愛いし口説く気がまったくないと言えば嘘になるが、望巳が気になる女性はそんな得体の知れない転校生よりも、彼女を一番前の席で真剣に眺める一人のメガネをかけた優等生風味の女性。



『大場(おおば) 奈津(なつ)』・・・・先ほど、このクラスの委員長に決まった女性だった。



 最初に出会ったのは、去年の秋ごろにあった1組と2組の合同授業。



 すごく、きれいな女性だと思った。



 やがて、彼女を意図的に眼で追うようになり、気がついたら恋に落ちていた。



 成績優秀、品行方正、おまけにあの容姿。



 調べてみたところ、案の定彼女のファンは多かった・・・。



 まともに口も利いたことなど一度もない女性。



 自分には高嶺の花なのかもしれない。



 それでも、今は同じクラスになれたことを喜ぶことにしよう・・・・。