「遅いよ。どれだけ待たせる気?」



 バイクを全力疾走で走らせて家に帰ると、なのはが家の前で仁王立ちして待っていた。



「悪い。色々立て込んでて・・・。」



「タバコの匂い撒き散らして、何言ってんだか・・・。どうせ、また太刀魚さんとノンビリしていたんでしょ?」



 バレバレっすか?



「いや、そんなことは・・・。」



「ハイハイ。下手な言い訳は良いから、行こう。映画、6時からだよ。」



 それはまずい。



「何だと、それは急がないと。」



「だから、最初からそう言ってるでしょ!」



 なのはが、自分の手を取って走り出す。



 アレから二人の関係は変わらない。



 あえてあげるなら、自分の中で『早川さん』と呼んでいた彼女がいつの間にやら『なのは』に変わった。



 それだけだ。



 それから何か変わるとは思えない。



 それで良いと思う。



 それが良いと思う。



「こうしてみると、俺たち、付き合っているみたいだな?」



「え?私たち、付き合ってるんじゃなかったの?」



「はい?」



 ・・・・・・・・・・・今はまだ。この関係を続けていよう・・・。



 そう思う秋の夕暮れだった。






おわり