9月20日。



 大々的な音楽とはギャップのありすぎるほどのチープな演出と共に、学園祭の幕があけた。



 教室という教室が何かしらの店に変わり、所狭しと露店が立ち並ぶ、赤塚祭。



 今年は晴天に恵まれたということもあり、去年に比べて、人の入りが多い気がするのは、気のせいではあるまい。



 このときばかりは、望巳も何かしらの部活に所属していればと後悔する。



「いらっしゃい。」



 そんな中、望巳が訪れたのは、漫画研究会が運営する焼きそば屋。



 亜紀が所属するお店だ。



「なんだ?メイド服じゃないのか?」



「何を、期待していたんだ、お前は・・・。とりあえず、何か食べる?」



 昨日のことがウソのように明るい返事を返す亜紀に、少しホッとする。



 こいつには、コレぐらいでいてくれた方が自分としては嬉しいのだ。



「何か・・・って、焼きそばしかないだろうに?」



「言葉のあやだよ。深くつっこむな。焼きそばね。望巳には色々手伝ってもらったし、ご飯サービスしておくよ。」



「ご飯?」



 焼きそばにご飯って・・・。



「知らないの?焼きそばご飯?我が家では定番メニューだよ。」



「初耳だぞ。」



「はぁ~天然記念物だね、望巳は・・・。よし、お姉さんに任せておきなさい。」



 言うが早いが、屋台の裏でもぞもぞと動き始める亜紀。



 しばらくして出てきたのは、本当に焼きそばにご飯が混ぜられた『焼きそばご飯』なるものだった。