夏と秋の間で・乙



「だって、自分がそれをやられて人生のどん底に落ちたっていうのに、それとまったく同じことしているんだもん・・・。」



 あ・・・・・



「もしかして・・・サンマのことを言ってるのか?」



「・・・うん・・・そんな、横取りみたいな真似・・・やっぱり、最低だよ。」



 そんなこと・・・



「恋愛に順序なんて・・・。」



「あるよ」



 それは力強い早川さんの言葉。



 だけど彼女の言葉はまだ続く。



「・・・少なくとも、私にはあったんだよ・・・。」



 だから・・・自分は後釜だから、忘れて欲しいと言った。



 今まで大事に育ててきた大切な彼女の気持ちを、いきなり現れたひょっとこが、もぎ取るなんてコト出来るはずないのだ。



「そんなこと言い出したら、ろくな恋愛できないだろう?」



「そんなもの・・・もう、するつもりもないよ。」



「・・・・・・・・・・・・・。」



 重い言葉だと思った。



 悪女の評判は伊達じゃない。



 いったい、彼女が何人の男と付き合ったのか・・・自分では想像も出来ないぐらい大人数なのだろう。



 だけど・・・



 ・・・・・・・・・彼女は、その中の誰一人として、好きではなかったのかもしれない。



 ただ、寂しさを埋めるための存在。



 だけど、そのどれもが不十分。



 だが、俺なら出来ると・・・?



 ・・・・・・・馬鹿馬鹿しい。



 同情から心変わりをするなんて、それこそ告白されて心が揺らぐことより、最低なことじゃないか?