夏と秋の間で・乙



「まさか、せっかく告白されたのに、断るのがもったいないとか・・・そんな、最低の考えじゃないだろうな・・・?」



 口に出したのはわざと。



 そうすることで、そうじゃないと、必死に否定したかったのだ。



「まぁ、私はそれでよく後悔するけどね~。」



 だけど、その言葉に返事が返ってくる。



 え?



 驚いて、顔を上げると、そこにいたのはさっき分かれたはずの早川さんの姿が見えた。



「あれ?どうして?」



「どうしてって・・・ここがどこだか、分かってる?」



 え?



 言われて、あたりを見回すと、目の前に自分の家が・・・そして、その隣には早川家を見ることができた。



 どうやら、考え事をしているうちに、無意識に自分の家に帰ってきてしまったらしい。



 帰巣本能って・・・人間にもあったんだな・・・。



「気付かなかった。」



「しっかりしてよね、お兄さん。」



「それより、早川さんはどうしてここに?」



 夜の10時半。



 よい子は家の中でくつろいでいる時間だ。



「うん?望巳くんを待っていたんだよ。」


「俺を?」


 何でだろうか?