少女王子さま 〜田舎娘に小鳥のワルツを〜



「…う………」

「あっ、まさか王子、あたしの名前覚えてないんだ?」

「お、覚えてるに決まってるだろ!こんな簡単な名前!」

「じゃあ呼んでよ!」

「……うぐ………。」

「二文字だもん。簡単なんでしょ?」

「う……………。」

少年は苦虫を噛み潰しながら俯いた。
しかし少女の視線はぐさぐさ刺さってくる。
……逃げられそうにはないらしい。

「…………………………………………………………………………………ミミ。」

真っ赤になりながら、やっとのことで振り絞って顔をあげた少年は、そのままぴたりと固まった。

「ーーーーはい。」

本当に嬉しそうにふわりとはにかんだ少女に、少年はしばらく見とれた。

しかし、ふいにぷぷ、と横から笑われ、少年は存在さえ忘れていた2人をぎろりと睨む。

「………………………………………もういい、何でもいい。好きにしろ!」

そして立ち上がった少年を、少女は不思議そうに見上げた。

「え、いいの?」

「いいから、休憩は終わりだ!さっさと立て!」

「う、ああ~」

少女を無視して少年は元の場所へ歩いて行く。
いきなりの練習の再開に、今度はミミが唸る番であった。