少女王子さま 〜田舎娘に小鳥のワルツを〜


*******


「うう………ま、迷った。」

陽も暮れてとっぷりと暗くなった王宮の廊下で、ミミは立ち尽くしていた。

「ここ……どこ……………?」

勢いで飛び出したはいいが、どっちに行けば外に出れるやら何も分からない。
とりあえず走り進んでいると、途中でコレットが追いかけてきているのに気づいた。
それにびっくりして無我夢中で走っているうちに、更に奥へ奥へと来てしまったらしい。

一回だけ地図は見ていたけど、まったく頭に入ってなかった。
だってものすごく広いんだからしょうがないじゃん、と心のなかで毒づきながら、とうとう少女は足を止めた。

「ほんとに迷子になっちゃった。」

……きっと笑われる。
少年の意地悪な笑い顔が頭に浮かんできて、ミミはそれをぶんぶんと頭を振ることで追い払った。

ため息をつきながら、高い高い天井を見上げる。
昼間に見た綺麗な彫刻があるだろうそこは、今は真っ暗で何も見えなかった。

(……なにしてんだろ、あたし。)

走って頭が冷えてきた。
……冷静に考えれば、リュカはルイスを捜すために、ペルティエ王国の南端にあるピーシランクまで来ていたのに。

会いたくなくて遠ざけている人を、王都から2日かかる国の端っこまで捜しにくるだろうか。

会わないというのはリュカが壁を張っているからではなくて、会うことによってルイス王子にもなにか危険が生じるからなのかもしれない。

(何も知らないのに……、悪いこと言っちゃった…かもしれない。)

気がたっていたとはいえ、言いすぎた。
しかも相手は王子様で……。

「って、あたし今度こそ、打ち首じゃない!?」

自分の行動を思い返して、ミミは真っ青になった。
に、二度もひっぱたいてしまった!
この国の、第一王子を!

「こ、これはほんとに早くここから逃げなくちゃ…!」

そうしてミミが冷や汗だらだらで慌てふためいていると、急にふっと照明の灯りが消えた。

「……………………………えっ?」

窓がないので月明かりも届かない、とりあえず真っ暗だ。
右も左も、前も後ろも分からない。

「な、なんで?ちょっと待って…」

暗いのは苦手だ。
さっきまでは照明のおかげでかろうじて大丈夫だったのに。

「だ、だれかいませんかああ」

手を闇の中でさ迷わせるが、何も掴めない。
何か掴んじゃってもそれはそれで怖いのだけど、今は何かにすがりたかった。