少女王子さま 〜田舎娘に小鳥のワルツを〜


「緑派では、母上がソフィー様を殺めたという説も流れているから。」

「な、なに言ってるの?リュカは今でもソフィー様を信じているのでしょう?それならルイス王子も、マリア様を信じているはずだわ。」

「ルイスはあの時3歳だった。覚えているわけないだろ。」

「そんなことないってば、お…お母さんは違くても兄弟なんでしょっ?ルイス王子だって同じ考えに決まってるじゃん、一回でも聞いてみたの?」

「…11年前から、実際俺達は二人で会ってない。今ルイス姿のお前に会ってるのだって変に思われてるんだ。たぶん今回いなくなったのもーー」

ばっちーーーーーん、と乾いた音が響いたのはミミが少年の頬を叩いたからだと気付くには、11年前に想いを馳せていた少年には時間がかかった。

「………………………………な、」

「ばっ……かじゃないの!?」

「み、ミミ…お前またっ!?」

「そんなの、ルイス王子に聞かなきゃ分かんないじゃん!そんなんで勝手に壁つくってんのは、リュカでしょ!?」

「ーーえ、…でも」

「でもじゃない!会える人に会わない意味が分かんない!……行方不明になっちゃったら、もう聞けないじゃん!ーー生きてる間に聞かないと、永遠に分からないで終わっちゃうこともあるんだから!」

「え?」

なんで急に話がそっちに、と言いかけて、少女に家族がいないことを思い出して口をつぐむ。

「――お母さんがいなくなったルイス王子が一番悲しいのに!リュカも、みんなみんなばかみたい!もういい…あたしがルイス王子見つけてくる!」

そう言ってぶんと踵を返した少女は走って部屋を飛び出してしまった。

「え、おい、ちょっ……!」

追いかけようとして、少女がいた所に雫が落ちているのに気づいて立ち止まる。

泣かせてしまったのだ。
そのことに何故か動揺している自分に驚いて、少年は立ちすくんでしまった。

「……わたくしが行きますわ。」

コレットが少年の肩に手を当て、少年を諭す。
そうだ、今自分が行っても逆に怒らせるだけだろう。

「……ああ…頼む。」

「お任せください。」

コレットが出ていった後も、リュカは暫く呆けたまま突っ立っていたらしい。

「ーーあれ殿下?ミミ様とコレットはどこへ?…どうかされました?


部屋に入ってきたエドゥアールに不思議そうに尋ねられ、少年は漂っていた思考をふりきった。