返事もせずに切ったあの電話。

本当はこのまま透が家に謝りに来るまで待とうと思った。

けれど、自分の中で渦巻く裏切られた悲しみのやり場が分からず、透のマンションに向かったのだった。




実際に会っても結果は同じだった。

一方的に混乱した想いをぶつける私と、それを落ち着かせようとする透。

その冷静さにますます腹が立って、結局透の言い分を何ひとつ聞かないまま部屋を飛び出し、頬を痛めて秋風にさらされてしまうことになったのだった。


この時


どうしてカーディガンを取りに戻らなかった?


どうしてもう一度透と向き合おうとしなかった?


どうして変な意地を張ってるだけだと認めなかった?




でも

この時の私は

追い掛けてはこない透にますます腹を立て、頬に手をあてたまま街へと流れて行ったのだった。