O.S.C

「カウ」

彼女が声をかけると、影は地面から離れた。

そして見る間に一匹の犬となる。

―犬神だ。

「カウ、と言うのか? その犬神」

「はい。生前から呼んでいました」

彼女はあくまでも淡々と話す。

素っ気無いしゃべり方だが、しゃべるだけ良い方だ。

「何か変わったことは起きていないか?」

尋ねると、彼女は首を傾げた。

「いえ、特には…。何か起こりそうなんですか?」

「ちょっとな。騒がしくなるかもしれない」

そう言いつつ、私はバックからナオから受け取った紙袋を取り出した。

「何かあれば、この紙に書いてくれ。折鶴の折り方は知っているか?」

「はい、知っています」