満ち足りない月





震える声でそう言うと、自然に涙が目にたまってきた。


ラルウィルはそんなセシルを見つめながら何かを言いかけたが、すぐにその言葉を飲み込んだ。

そして一度目を閉じると、違う言葉をかけた。

「大丈夫だったか?」


それは、セシルが生きてきた中でも一番温かくて優しい言葉だった。


それがまるで引き金になったように涙はセシルの頬を伝っていった。

「うん。でもさっき黒い服の男達がいて、分からないけど私、怖くて…」


嗚咽を漏らしながらセシルは言った。


するとラルウィルの目の色が急に変わる。