いつの間にか授業が終わってしまっていた。



一日をどう過ごしたのかわからないくらい、私はボーっとしていたらしい。



窓の外は夕方なのにまだ明るい。


白い雲が空をゆっくりと滑るのを目にとめて、私はゆっくりと帰り支度を始めた。



靴箱を出て、正門までの30メートルほどの道をグラウンドに沿ってゆっくりと歩いて帰る。


グラウンドからは部活生の元気な声が聞こえてくる。



暑いのにすごいなーなんて、ぼやけた頭の隅で思った。




「及川さーん!!」



突然誰かに名前を呼ばれた。

後ろから誰かが呼んだのかと思って振り向くけど、何人かの生徒がそれぞれしゃべりながら帰っているだけだった。



「聞き間違い?幻聴?」



なんて思ってると、また声が聞こえた。



「こっち、こっち!!

及川さん!!」



声の聞こえた方に体を向けると、サッカーボールを脇に抱えた練習着姿の藤原君が手を振っていた。