「それより、何で俺がお前を家まで送ってやったか覚えてるか?」


「え……っと……トイレに……」


「こんなところで立ち話できる余裕はあったんだな」


くっと口角を持ち上げて不敵な笑みを浮かべる小野君。



「いい匂いとかなんとか……ボソボソ言う余裕もあったんだ?」


「そ、それは……!!」


小野君の体にしがみ付きながら発した独り言。


まさか……小野君に筒抜けだった?


そんなぁ……!!あたし他に何言ったっけ?!


なんで『いい匂い』なんて言っちゃったんだろ。


これじゃ、まるで匂いフェチみたいだ。


穴があったら入りたいくらい恥ずかしいよぉ……。



「早く家に入れ」


「……はい!!小野君、今日はありがとう!!」


あたしは小野君に背中を向けると、玄関の扉を勢いよく開けて中に飛び込んだ。