さっきまでは遠く感じていたその音が次第に近付いてくる。 そして、道を曲がり終えた頃、その音はあたし達の目の前でピタリと止まった。 「……小野君?」 真っ黒い単車にまたがってあたし達をジッと見つめている小野君に思わず口をポカーンっと開ける。 小野君は眉間に皺を寄せて、何故か怖い顔をしている。 「電話」 「……へ?」 「何で電話に出ないんだよ」 「え?電話?」 慌てて携帯を確認すると、確かに小野君からの着信が数回あった。