「……小野君、どうしたの?!」


急に腕を引っ張られて、心臓が止まるかと思った。


……まったくもう。小野君は全然分かってない。


小野君の何気ない行動が、どれだけあたしをドキドキさせているか。



「静かにしろ」


電柱の陰に引っ張られ驚いて顔を上げると、小野君はあたしの口を大きな手の平で塞いだ。


「……っ!!」


「あいつがいる」


「……――?」


小野君は制服のポケットから黒い携帯を取り出すと、誰かに電話をかけ始めた。


小野君の手の平が自分の口にくっ付いてる。


それだけのことなのに、心臓が爆発してしまいそうで。


体中がクラクラして、熱を帯びる。




「俺の役目は終わった。帰るぞ」


小野君はあたしの手を掴むと、家とは逆方向に歩き出した。