「お前が食え。好きなんだろ」


「何でそれを小野君が……?」


「前言ってただろ。好きだって」


「いつだっけ……?」


「付き合い始めた頃。お前、覚えてねぇのかよ」


小野君は手に持っていたコーヒー缶にフィルター近くまで吸って短くなった煙草を無理矢理押し込みながら、ぶっきら棒にそう言った。



あ……。なんか……思いだした気がする。


付き合い始めた頃、売店で最後の一個だったメロンパンをゲットして喜んで教室に帰った時、小野君に言ったんだ。


「あたし、メロンパン大好きなんだ!!」って。


あの時、小野君はメロンパンをあたしに譲ってくれた。




今まで小野君にメロンパンを頼まれても一度も買うことが出来なくて。


もし買えていたら、あたしにメロンパンをくれたの?



「小野君、あたし何だかとっても幸せです」


「……意味分かんねぇ」


ニコッと笑うと、小野君はあたしと目を合わせようとはせずにぼんやりと空を見上げた。