「お金は一応多めに持ってきたから大丈夫だし、お母さんには舞子の家に泊まるって連絡しとく」


「泊まり前提かよ」


「え?泊まり以外にも何かあるの?」


首を傾げると「お前が言いだしたんだからな」小野君はそう言ってあたしの手を引き歩き出した。


体は雨で冷え切っているのに繋いでいる手の平だけは温かい。



意外にも、ラブホテルには高校生のあたし達でもすんなりと入ることが出来た。


「年齢確認とかするのかと思ってた」


「するはずねぇだろ。一度もされたことねぇよ」


「小野君はこういうところに来るの初めてじゃないんだね」


唇を尖らせながら皮肉を言うあたしに、小野君は柄にもなく「しまった」という表情を浮かべて目を泳がせた。