「だからね、あたしは小野君のさりげない優しさが好きなの!」


もしこれで分からないと言われたらどうしよう。


そんな心配をしたけど、小野君は聞き返してこなかった。


その代わりに、何故か小野君はプイッとあたしから顔を背ける。


「……おーい、小野君?」


「……んだよ」


その横顔が少しだけ赤くなった気がするのは、きっと目の錯覚だ。


だって、辺りは真っ暗だし小野君の顔が赤いなんて分かるわけないもん。


だけど、どうしてだろう。


あたしが「好き」って言った途端に小野君が顔を反らすなんて。


……もしかして、小野君……あたしに「好き」って言わせようとしてた?


そんな……まさかね。



「ねぇねぇ、小野君……――」


調子に乗って小野君の袖をクイクイッと引っ張る。


すると小野君はパッとあたしの手を掴んだ。


「前見て歩け」


「へ?」


小野君の言葉にハッと我に返る。


目の前には一本の電柱。


「あ、ごめん!!ありがとう」


慌ててお礼を言うと、小野君はあたしの頭をポンッと叩いた。



「お前、危なっかしいんだよ。俺から離れんな」


小野君の言葉がグルグルと頭の中を回る。


「……離んなって……どうすればいいのかな?」


小野君に自分からくっつける度胸もない。


だからと言って、小野君は離れるなって言うし……。




「こうしてればいいんだよ」


すると、小野君はあたしの腰をグイッと自分の体に引き寄せた。


小野君の体とあたしの体がピタッと密着する。


息が止まりそうなほど驚いて口をパクパクと開ける。


あたしは小野君に30センチ以上近付くと、心臓が爆発しちゃうんだ。


心臓がバクバクと暴れ出して、全身が熱を帯びる。



「お、お、小野君……」


「バカ面」


そんなあたしを見て、小野君はふんと余裕そうな笑みを浮かべた。