「壱星ね、昔より丸くなったのよ。アユちゃんっていう彼女ができたからかも」


「そんなことないですよ」


「ううん、きっとアユちゃんのおかげよ。気難しい弟だけど、これからも壱星をよろしくね?」


「……はい」


やっぱり星華さんは小野君のお姉ちゃんだ。


ニコッと笑う星華さんが一瞬だけ小野君に見えて。


あたしは赤くなった頬を隠すように手で覆った。



「それでね、迷惑かけちゃったお詫びにこれ」


すると、星華さんは思い出したように黒いエナメルのバッグから二枚の薄い紙をあたしに差し出した。


「これは何ですか?」


「水族館のチケット。期限が近いんだけど、よかったら、壱星と一緒に」


「……わぁ!いいんですか?ありがとうございます!」


「壱星に渡すとアユちゃん誘わないで終わりそうだから」


そう付け加えた星華さんは小野君の性格をよくわかっている。


あたしと星華さんは外が暗くなるまで冗談を交えながら会話に花を咲かせた。