「悪かったな」 しばらくすると小野君が戻ってきた。 女性はまだ土手の頂上から離れようとはしない。 小野君を未だに待っているようだ。 それは小野君があたしではなくあの人を選んだことを意味している気がして、あたしはとっさに巾着を掴み立ち上がった。 「……小野君、あたし帰るね」 ダメだ、こんなところで泣いちゃだめ。 「は?」 自分に渇を入れて唇を噛み締めると小野君があたしの腕を掴んだ。