「……ここで待ってろ」 小野君はチラッとあたしに目をやると、すぐに女性の腕を掴んで歩き出す。 「ちょっと、壱星!痛いってば!!」 「黙れ」 小野君と女性は土手を上がっていく。 二人の後ろ姿を見つめていると、一発目の花火が上がった。 周りからは溜息にも似た歓声が湧き上がる。 夜空に絵を描くように弾ける花火はとても綺麗なのに。 今は花火を落ち着いて見る余裕なんてなくて。 あたしはずっと、小野君と女性のことばかり考えていた。