「ねぇ、小野君。さっきのおじさん……誰かに似てない?」
人混みからようやく脱出して、小野君にそう聞いてみる。
「悠介の父親。笑い方似てるだろ」
「あー……、どうりで……」
小野君の答えに、あたしは大きく頷いた。
誰かに似てると思ったけど、悠介君だったんだ……。
頭にラインを入れている悠介君の笑い方は父親譲りだ。
笑い上戸なところも似ている。
妙に納得していると小野君は近くにある土手を指差した。
「あそこで食うか」
「うん!」
この町に越してきてからまだ4カ月。
辺りが暗いこともあってどこに何があるかサッパリ分からない。
あたしは小野君に手を引かれて土手まで移動した。



