待っている間、本当はずっと不安だった。
今日が夏祭りという特別なイベントだからなおさらだ。
通り過ぎて行くカップルを目で追って胸が張り裂けそうだった。
自分の周りだけ時間が止まってしまったような感覚。
ぼんやりとそれを眺めていると急に寂しくなって。
……小野君に会いたくなった。
「……俺のせいだ。ごめんな」
「謝らないで。小野君が来てくれただけでもう十分だよ」
小野君の体はいつもより熱を帯びていて。
額に浮かぶ汗が全てを物語っていた
今の時期、昼間は蒸し暑く少し動いただけで汗だくになる。
でも夜になると暑さが少しだけ和らぐ。
今日はいつもより涼しくて、夜風が気持ちいいくらいだ。
小野君はあたしとの約束を忘れてなかった。
遅刻したのにも何か理由があるんだろう。
慌てて駆けつけてくれた小野君を、到底責める気になどなれなかった。



