「黙ってないで何とか言えよ」
「……本当に彼氏待ってたんだ?仲良くしなよ?」
小野君の迫力に男達はすぐに踵(きびす)を返し、人混みの中に紛れるように散っていった。
「……小野君……来てくれたんだ……」
「遅れて悪かった」
ホッと胸を撫で下ろしていると小野君はどこか申し訳なさそうな表情を浮かべた。
そんな小野君にあたしはニコッと微笑んだ。
「いいの、来てくれただけで嬉しいから。本当は忘れてるんじゃないかって心配してたんだ」
「あぁ」
「小野君が来てくれなかったら、一人でやきそばでも買って食べようとしてたの」
「あぁ」
「でも、今日は暑いからかき氷のほうがいいかなって」
「あぁ」
「えっと……それでね……」
「……――もう何も言うな」
頬を伝う涙に気付いた時には、小野君の胸に抱きしめられていた。



