小野君に告白されたのは、この学校に転校してきてから一週間が経った頃だった。


学校一の不良である小野君に呼び出されて、あたしは内心ビクビクしていた。


小野君とは一回も喋ったことがなかったし、目を付けられるようなことも、気に障ることもしていないつもりだったから。



もちろん小野君とは何の関わり合いもなかったけど、何故かよく目が合った。


休み時間に友達と喋っている時とか、お昼休みにお弁当を食べてる時とか。


あたしは怖くてすぐに目を反らしたけれど。


……もしかしたら、目を反らしたことに対して怒りを感じたのかも。


嫌な想像を膨らませながら裏庭に向かうと、大きな後ろ姿が目に飛び込んできた。



「あの……小野君、あたしに何か用かな?」


小野君の真っ正面に立って手に汗を握りながら首を傾げる。


すると、小野君はあたしの目を真っ直ぐ見つめてこう言った。



「お前、俺と付き合え」


それはあまりに意外な一言で。


まさか、小野君があたしと?


「え……?」


「決まりだな」


唖然としているあたしに小野君はニッと口角を上に持ち上げる。



小野君の顔をこんなに間近で見たのは初めてで。


ムスッとした表情をしていることの多い小野君が見せた、わずかな笑み。


あたしは小野君の笑みにハートを撃ち抜かれてしまった。