「話なら飯田にすればいいだろ」


顔を上げることなく、くぐもった声でそれだけ言うと、小野君は何度話しかけても反応を示さなくなった。


タヌキ寝入りしてる。


そう知りながら、あたしは小野君の席を離れて舞子の元へ向かった。



「……全然ダメ。小野君、かなり怒ってる……」


思わず漏れる溜息。


でも、舞子の反応は落ち込むあたしとは対照的だった。



「でもさ、小野君が怒ってるのはアユが好きだからでしょ?」


舞子はニッと意味深な笑みを浮かべる。


「それに、意地っ張って話も聞いてくれない子供っぽい小野君もたまにはいいじゃん!なんか胸キュン!!」


「……えぇ?!」


まさか、舞子……。小野君のこと……。


「なんてね。あたしには彰人っていうバカだけどそこそこ顔の良い彼氏がいるし、浮気はしませんよ」


「そこそこって……」


苦笑いを浮かべると舞子は「冗談。彰人はあたしにとっては最高の彼氏だよ」そう付け加えた。