「で、何があったか説明しろ」
直人君が去ると、小野君はあたしをジッと見つめた。
「男の人同士が喧嘩してて……その一人があたしにぶつかってきたの。顔から血がいっぱい出てて死んじゃうかもって怖くなって……」
「顔は少し切れるとすごい量の血が出る。でも、案外たいしたことない」
「あのね……あたし、喧嘩とか間近で見るのが初めてで……」
「あぁ」
「それで、すごい怖くて……。小野君助けてって心の中で叫んでたら、直人君がきて……」
「あぁ」
「それで……それで……」
涙は何度拭っても頬を伝い止まってくれる気配がない。



