「……もう大丈夫だよ。ありがとう」 慌てて頬に伝った涙を拭く。 「何やってんだよ」 「小野君……」 すると、人混みをかき分けながら小野君があたし達の元へ近付いてきた。 「姫川さんを一人にするなよ。喧嘩に巻き込まれそうになってたんだぞ」 「あのバカ達の喧嘩か」 小野君は未だに収まる様子のない喧嘩をチラッと横目で見ながら溜息交じりに言う。 「彼女が危ない目にあったんだぞ?何でそんなに呑気なんだよ!」 拳をギュッと握って怒りを露わにする直人君を小野君は冷たい目で見下ろした。