「観覧車、乗りたいって言ってただろ?」


あの動物園デートの日。

動物園に隣接されていた遊園地にある観覧車を見上げ、眩しそうに言った。


「あの一番上、行ってみたいなぁ。」


動物園と同じように、家族連れで賑わう空間。

二人で乗ろうと約束した。

結局は、途中で中断したデート。

彼女の希望は叶えられないまま。

そんな中、偶然にも、今日のロケがこの遊園地。

休憩中、観覧車の前であの日の事を思い出していた。


「乗りますか?」


「え?」


振り向くと、初老の男性がにこやかに観覧車を見上げていた。


「いえ。これに乗るときは、一緒って決めてる人がいるんです。」


「それは、………あなたの大事な人ですか?」