東京郊外。
『鬼志茂』にある郷土資料館は、だいぶ年季の入った、平屋のこぢんまりとした建物だった。
板張だが『ログハウス』のような洒落たものではなく、『昔の学校』のような古めかしい外観だ。
平日の昼時な為か元々そうであるのか、駐車場も玄関から見える館内も人気がなく閑散としている。
「何だか、暇そうだねー。車が一台も停まってないし」
玄関前で足を止めると、茜はしみじみと周りを見渡した。
「茜、間違っても中でそんなこと言うなよ」
「分かってるって!」
私にだって、そのくらいの一般常識はありますよーだ。
茜は頬を膨らませながら、館内に入っていく敬悟の後を追う。
その足下を、玄鬼がちょこまかと付いていく。
ちなみに『おまけの彼氏君』こと橘信司は、入るに入れず駐車場で気を揉みながら、一行を見送った。