「間に合ったみたいだな。ほら、出したら補給。ミルクティーでよかったろう?」
茜が慌てふためいて車の助手席に滑り込むと、敬悟は紙コップを差し出した。
「あと、食事は適当に買ってあるから」
売店で買ってきたのだろう白いビニール袋入りのおにぎりやサンドイッチを、茜は無言で受け取る。
「なんだ、腹でも痛いのか?」
食べものに反応しない茜の様子を不思議に思った敬悟が、茜の顔を覗き込んだ。
「敬にぃ……」
猫に話しかけられた!
おじいさん言葉の変な黒猫だよ!
と言おうとして、茜は言葉を飲み込んだ。
トンと、膝の上に当の黒猫が飛び乗ったからだ。
しまった!
窓を開けっ放しにしていた自分を呪ったが、後悔先に立たず。
茜は、おそるおそる子猫を見た。
ニヤリ。
猫が一瞬、笑ったような気がした。
「人が話しかけておるのに無視するとは、無礼なおなごじゃな」
「け、敬にぃっ!」
膝の上で、可愛らしい声で話しかける黒猫。
茜はさっきのトイレでの出来事が、寝ぼけたための幻だという微かな期待が、大きな音をたてて崩れていくのを感じた。
「どうしたんだ、この子猫。迷い猫か?」
「え!?」
敬悟のセリフに、茜は素っ頓狂な声を上げてしまった。
け、敬にぃ、聞こえてないの!?
こいつ、喋ってるよ!?



