早朝の食卓の上に、その短い置き手紙を見付けた茜の父、衛(まもる)は、驚きと言うよりは、来るべき時が来たかと言うような半ば諦めにも似た表情を浮かべた。
メガネの奧の理知的な瞳に、苦悩の影がよぎる。
それは、遠い昔を懐かしむようでもあり、悲しんでいるようでもあった。
「明日香……。子供たちが、行ったよ」
サイドボードの上に置かれた妻の遺影を見つめると、ゆっくりと静かに目を瞑る。
「守ってやってくれ……」
それは、祈りにも似た呟きだった――。
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