茜は震える手で胸のペンダントをまさぐると、ギュっと握りしめた。
もしかしたら、また何処かに飛ばされるかもしれない。
それでも、鬼に襲われるよりは100万倍もマシだ。
だが、茜のかすかな期待感は、手に伝わるひんやりした石の感触にかき消された。
理屈や原理は分からない。
ただ、今茜の手に中にあるのは、ただの鉱物だ。
茜はそう感じた。
逃げなくては。
とにかく、この部屋を出て人のいるところまで逃げなくては。
茜は後ずさりながら、部室の唯一の出入り口であるドアに視線を走らせた。
真希は、真希が変化した鬼は、その唯一のドアを背にして立っている。
窓は人が出入りできるほど、大きくはない。
逃げ場は何処にもなかった。



