だらり――。
電話を持った手が力無く垂れ下がり、携帯が、ゴトンと足下に転がり落ちる。
「ま、真希?」
突然の親友の変化に家で何事かあったのかと、茜は真希に歩み寄った。
落ちた携帯を拾って、顔をのぞき込む。
「!?」
茜は目を疑った。
真希の血色の良いピンクの口角が『ニイッ』とスローモーションを見るようにつり上がって行く。
邪悪さをたたえたその笑いには、見覚えがあった。
ニヤリ、と上がった口の端に、ぬらり、と白い大きな犬歯が光る。
それはもはや、肉食獣のそれだ。
少女の、いや人間のものでは有り得なかった。
キロリ。
血走った異形の眼が茜を見た。
紅い。
まるで血を思わせる深紅の瞳。
猫のような細い弓形の瞳孔が、キラリと金色の禍々しい光を放つ。
「ま、真希!?」
茜は、湧き上がる恐怖心で、じりじりと後ずさった。
――あれは、
夕べの事は、夢なんかじゃない――。
あれは、本当にあったことだ!



