「茜。おい、茜!」
誰かが、自分の体を揺さぶっている。
もうろうとした意識の下、茜は「この声、だれだっけ?」と、ボンヤリ考えていた。
「おい! 茜! いい加減に起きろ!」
「あっ!?」
この声!
突然、意識がはっきりして、茜は飛び起きた。
瞬間、『ごちん』と鈍い音が響いて、『おでこ』に激痛が走り抜ける。
目から、火花が散った様な気がした。
「痛った~い!!」
思わず声を上げ、両手で額を抑えながら目を開けると、同じく額を押さえて無言で睨んでいる敬悟の顔があった。
「あ、あれ?」
敬にぃがいる。
茜は眉根を寄せて額を撫でている敬悟の顔を、呆然と見詰めた。