――あれ?

――ここは、どこだ?


目を覚ました茜は、自分のいる場所が何処なのか分からずに、きょろきょろと周りを見渡した。


ゆっくりと起きあがる。


そこは、不思議な場所だった。


暗闇では、なかった。


でも、周りに何があるのか分からない、言うなれば濃密な「青い闇」


両手を前に突き出して、探ってみる。


じりっ、じりっと、進んでみるが、その手には何も触れない。


見えないと言うのは、こんなに心細いものなのか。


まるで底なし沼を泳いでいるような、そんな不安感が茜を襲う。


「敬にぃーっ」


恐怖に声が掠れる。


あの時……。


あの『鬼』を見て、青い閃光に意識を焼かれる瞬間、聞いたのは間違いなく敬悟が自分を呼ぶ声だった。


なのに、どうして敬悟はいないのだろう?


今、自分がいる場所が何処なのか分からないことよりも、敬悟がいないことの方が怖かった。


――まさか、あの鬼にどうかされてしまったの!? 


「敬にぃっ!」 


返事はない。


無限とも思える静まり返った空間が、ただ広がっているだけだ。