ま……さか?


敬悟は体を引き起こすと、広場の中心にそびえ立つ巨大な石柱の天辺を仰ぎ見た。


石柱の上にあった筈の白いドームが、無かった。


そこに刺さっているのは、一本の青い矢。


茜の放った矢は黒い大鬼を倒したのみならず、結界の発生装置をも貫いていたのだ。


連動している船の自爆装置が作動し、洞窟を崩落させ始めたのだった。


――敬にぃ。


ごめんね。


最後にどじっちゃったみたい……。


自分の名を呼ぶ敬悟の声を、途切れがちな意識の下で聞きながら、茜は、自分が侵したミスを心の中で詫びた。


呼び覚まされた純血種の能力は、大鬼を倒すことと結界の発生装置を破壊することを、同時にやってのけたのだ。


どうせなら、逃げるところまで面倒見てくれればいいのに……。


そう心の中で愚痴ってみたが、現実は、そんなに上手く行かないらしい。


オーバーヒートだ。


持てる力を一気に放出してしまった身体は、鉛のように重く自由がきかなかった。