「ああ、もうっ!」


後ろなど振り返った、自分のドジさ加減と方向音痴を呪ったが、そんなことをしていてもどうにもならない。


こうしている間にも敬悟は戦っているのだ。


ブルブルと頭を振り、気持ちを切り替えると、おもむろに着ている白装束の裾を『えいっ』とめくり上げ、地面に四つんばいになった。


両の手のひらで、微かな振動音を必死で手繰って行く。


「ううっ。私って、とことん進歩がないなぁ……」


恐怖感を紛らわせるように、そんなことを呟きつつ、はい進んで行く。


と、出した右手の下の地面が無かった。


「きゃあっ!?」


右手を踏み外して、ぐらりと体が傾く。


左手を必死に踏ん張ったが、勢いが付きすぎて踏み止まれない――。


ぐるん、と天地が逆転する。


――ダメだ、落ちる!