「おい……」 敬悟は、力無く地面に横たわる上総の身体を揺さぶった。 目の前で、変化していた上総の腕と顔が人間のものにすうっと戻って行くのを、呆然と見詰める。 「な……んで……」 何故、涙が出るのだろう――? 何故、こんなに悲しいんだろう――? 上総は、いずれは倒さなければならない敵だった。茜を守るには、それしか選択肢はなかった筈だ。 それでも、後から溢れ出す涙の訳を、敬悟は分からずにいた――。