敬悟を、焦燥感が襲う。


「いかに元々長命な種族とはいえ、それは母星にあってのこと。この星では、普通の人間とさして変わらない。でもこの里に生きる者は母星での寿命とそう変わらない。なぜだか分かりますか?」


「……結界か?」


「そう、結界です」


上総が愉快そうに笑う。


「この里は、特殊な空間でシールドされています。それはこの空間を母星のそれと同じに保っています。だからこそ、私は五百年も生きているのですよ」


「中身はよぼよぼのジィサンだった訳だ」


敬悟が上総の隙を狙って、洞窟に飛び込もうとタイミングを計る。


上総の言う事が真実なら、茜を早く連れ戻さなくては手遅れになる。

 
「おっと、あなたを行かせる訳にはいきませんよ」


敬悟の意図を見透かしたように、上総が洞窟の前に立ち塞がった。


「あなたの役目は、『茜を導く者』。その役目は十分に果たしてくれました。礼を言いますよ」


上総が着ていた上着をゆっくりと、脱ぎ捨てる。


男にしてはあまりに白皙の青いほどの肌と、思いの外均整の取れた肢体が現れた。

 
「でも、もう不要です――」