そこにある何の変哲もない洞窟。


その変哲の無さが余計に不気味さを増長させる。


辺りは闇に包まれ、低い海鳴りが響いている。


明かりのないその場所を更に黒々とした闇が覆い隠していた。
 

「さあ、ここからは男子禁制です。どうぞお付きの者に付いて行って下さい」


「う、うん……」


上総に促された茜は、後ろにいる敬悟を振り返った。


敬悟は何も言わず、ただゆっくり頷いた。


『行って来い』そう、励ますように。


これは誰に代わって貰うことも出来ない、茜自信が解決しなくてはならない問題だった。


木部一族を束ねる惣領、その父に会って、茜の生き方を認めて貰わなくてはならない。


でなければ、決して、元の生活には戻れないだろう。


「行って来るよ」


意を決して茜は歩き出した。