「儀式って、昔の元服みたいな物だって言ったよね? 具体的にどんな事をするの?」
「何も難しい事はありません。成人した直系の者が代々続けてきた、形式的なものです。それに、中におられるのは茜様の父君です。『みそぎ』の為に籠もっていらしたが、やっと親子の対面が出来るのです。ゆっくり積もる話でもなさったら良いのですよ」
――何がそんなに可笑しいのよ?
笑いを含んだ上総の答えに、茜はむっとする。
答えの内容にではなく、明らかに揶揄するような響きが込められていた事に。
無言のまましばらく歩くと、見覚えのある場所に出た。
海岸縁の切り立った崖の一角がぽかりと口を開けている。
その入り口には、赤い鳥居。
あの場所だ。
十八年前、赤鬼が母・明日香を連れて入ったあの洞窟。
確か、あの時も『儀式』という言葉を聞いた気がした。
同じ物なのだろうか?
嫌な予感を覚えて茜は、眉を寄せた。